【書籍レビュー】がんと生きる

書評・BOOKレビュー

 元プロレスラーの小橋建太さんの著書「がんと生きる」ですが、今の私には少し考えさせる内容になっています。
 
 同書では小橋さんが腎臓がんを患った時から今に至るまでの出来事や心境などを綴っておられます。
 思えば私は三沢選手を中心とするほとんどの選手が全日本プロレスを離脱し、新しく旗揚げした「プロレスリング・ノア」をほとんど観ませんでした。それどころか、武藤選手が全日本プロレスの社長に就任してからはプロレス自体に嫌気をさし、子供のころから好きだったプロレスを見なくなっていました。
 その最中、突然のニュースで大きな驚きだったのが、小橋選手の腎臓がんのニュースでした。その時の衝撃は今でも覚えています。正直、「小橋選手のような人としても、レスラーとしても魅力的な人がが死んでほしくない…」と思ったのがその瞬間でした。

 そこから復帰が決まった時は、何年ぶりだったでしょうか、プロレスのチケットを買い、初めて日本武道館のノアの大会を観に行きました。そこから小橋選手を応援するためにノアの会場にも行くようになったことを覚えています。

 小橋選手のガンからの復帰は、私にとってもプロレスファンに復帰するきっかけになったのです。

 話が大きく反れましたが、その復帰の過程も色々とエピソードが書かれていますが、それ中からもリング復帰に至るまで非常に様々な試練があったことが読み取れました。
 ガンを治すことだけでなく、プロレスという厳しい世界に戻るための苦労は想像以上です。栄養補給もままならない中のトレーニング、そして定期的に行われる健診のプレッシャーも今の私には非常にわかります。それは本人だけでなく周りの家族にとっても非常に大きなプレッシャー、ストレスになるはずです。そういう肉体的のみならず、精神的なストレスにも打ち勝たなければ病気の克服どころかプロレスの復帰など実現しません。
 本を読んでいてもわかる通り、その苦労は並大抵のものではありません。体力面だけでなく、食事の制限、自己管理、また本には書かれていませんが薬の副作用なんかもあったかもしれません。精神的なストレスもあるはずです。あの多くのファンが熱狂した復帰戦に至るまでの戦いは、本を読み直しても勇気を得られると思います。
 「小橋選手なら復帰できるだろう…」と見ている側は楽観視してしまうかもしれませんが、それに至るまではとてもそんな状況下で無かったことが読み取れると共にそれを克服した小橋選手の人間力が強く伝わってきます。そしてそれを支えた現在の奥様の努力も忘れてはいけないでしょう。

 またガンの克服だけに留まらず、これまでの激闘の代償として肘や首などの大きく困難だったケガのことも書かれています。
 復帰後、少しずつ小橋選手の動きがおかしくなってきたのは日々見ているファンならわかったでしょう。その姿を見てどう感じたかは人それぞれですが、私は当時リングに上がってくれるだけで満足でした。本を読んで改めて感じたことは、その姿でさえかなり大変な状況下であり、それでも試合を成立していた小橋選手の凄みを再認識しました。

 人はそれぞれの立場で様々な逆境や困難なシチュエーションがあると思います。どんな状況下でも自分で行動し、克服しなければ先はありません。小橋選手が引退するまでの道のりは、自分自身が困難にあっても「前を向いて行動しよう。」と思わせてくれます。このケガからの復活劇も多くの困難に向き合った小橋選手の姿があったのですね。

 また引退後も小橋さんはエンターテイメント方面やプロレス興行のプロデュース、エクササイズや講演などの活動などご自身の年齢に対して制限を持たせず、様々なことにチャレンジしています。それらについて、また将来の夢なども語られています。
 人は(特に日本人は?)安定を求めすぎて、チャレンジしない人が多いように思います。仕事場でもスポーツの現場でも現状維持を求める人が多く、新しいことにチャレンジしたり、新しい知識を覚えたりすることを拒み、現状維持で楽をしたがる者が多いです。しかし、それでは本人のみならず組織、社会が成長しません。私にはプロレスでの熱い精神力のみならず、引退した今でも小橋さんのこのような姿は尊敬しています。
 
 今回の本はプロレス外の部分が結構中心になっております。しかし、プロレスファンは改めて小橋さんの魅力を再認識するでしょう。そして、今様々な困難や病気と戦っている人(患者の家族も含む)にとっても勇気づけられるでしょう。
 病気、ケガなど、様々な葛藤やその様子を同書を通じて紹介してくれたことに感謝したいと思い、自分自身も改めて日々前向きに行動していこうと思います。

がんと生きる

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